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2022/05/25(水) NO.875号 【最新の独り言】

誰もが均しく最先端ゲノム医療を受けられる国へ

私が主宰し、志を同じくする皆様と本年3月に立ち上げた「一般財団法人 勁草日本イニシアティブ」の主要事業のひとつとして、2月から既にスタートさせていた「ゲノム医療推進研究会」での4回にわたる議論を踏まえた最初の提言(注)を昨日取りまとめ、厚労省の記者クラブを通じてマスコミにも公開した。

(注)「『患者起点、患者還元』のゲノム医療実現に向けての提言」



参加頂いた国会議員の皆さま、厚労省、アドバイザーの中村祐輔先生、宮野悟先生、小崎健次郎先生、製薬企業等10数社の研究会会員の皆さま、また、私的に指導して頂いた臨床現場の先生方等、多くの方々に温かいご指導、ご協力を頂き、感謝に堪えません。

「がんで死なない国を作る」として、2016年12月に大臣としてスタートさせた厚労省のがんゲノム医療コンソーシアム。その後、2019年には、難病もその対象に加え、「全ゲノム解析等実行計画(第1案)」をスタート、その後、予算執行を止めた上での「患者起点、患者還元」のためのガバナンス確保のため一年余の議論の末、英国 Genomics England をモデルとしながら、同計画の第2版、および、国主導の全ゲノム医療研究開発プロジェクトの出直し的再スタートが間近となっている。

それに合わせ、今回の提言とりまとめでは、同研究会に参加頂いている創薬、検査や情報処理等幅広いゲノム医療関連産業の皆さまの声もしっかり反映させ、「真の患者還元」は、単にゲノム解析結果を患者に還元するに止まらず、適用外薬の同定や創薬など、新たな治療法が見出せるようになること、との認識から製薬メーカーの創薬目的のための提言も幅広く含め、取りまとめた。

今回の提言では、築地や柏市のがんセンターに行かない限り最先端医療を受けられない、と言ったこれまでの「偏った国」を脱し、全国どこにいようとも、故郷の基幹病院からであれば、誰でも、いつでも、全国的に同程度の「高水準最先端ゲノム医療を均しく受けられる国」を早期実現させなければならないことを強調した。今やオンライン技術などで空間を超越して様々な事が実現可能となっている。患者の地理的制約はもはや解決可能であり、それができないとすれば、それは人災だ。これまでの日本のデジタル・トランスフォメーション(DX)の後れを一気に取り返し、世界をリードできる日本、の実現への挑戦が求めらる。

もう一つ腐心したのは、がん治療において、標準治療(抗がん剤治療、放射線治療、手術)が利かないことが明らかでも、ルールに従って標準治療を施し続け、患者が体力消耗した後に漸く全ゲノム解析検査を行っても、手遅れとなり、折角の最先端医療の恩恵に浴することができない、という深刻な問題がある。

この解決のために、小児がん、希少がん、難治性がん等の場合には、全体としての保険診療の中で、全ゲノム解析等ゲノム医療という医学進歩の恩恵を広く国民が享受できるように如何にしたらできるか、そのためにはどうしたら良いか、という点に関して様々な議論を行った。結論は、ゲノム検査を許容する「ストライクゾーン」を少しでも広げる、という事が基本の提案で、そのために、まずは治療方針を決める前に全ゲノム検査やリキッドバイオプシー検査の実施を公的負担の下でより幅広く可能とする。当面は、先進医療等の既存制度の新たな対象に加えることを促進し、新たな治療方法を見出し、救命する、という事を提案している。

そうした、今回の新規政策提言の実現に向け、厚労省は、ダメな理由を並べることに終始せず、一人でも多くの患者の命を救う為にはギリギリ、手を尽くす、との心意気で臨んでもらいたい。

今後とも引き続き議論を重ね、ゲノム医療固有の問題解決はもとより、提言にも示した通り、個人の医療・健康情報の保護と利活用に関する特別法制定等、取り組むべき課題は幅広くある。引き続き研究会の皆さま方などとともに、鋭意努力を重ねて参る所存ですので、宜しくご指導賜りたいと思います。

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